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ヤーナはヘラの硬直した様子を感じ、拳で壁を殴りつけた。ヘラはそっと寄り添うと彼女の手を取ってやめさせる。
「皆には知らせないでくれ。一人で堕ろしてくるから。馴染みの遊里なら子堕ろしの闇医者の一人や二人いるだろう」
「やめなよ、ヤーナ。アレーがあんたに置いていってくれたのに」
「イザはやったことがあったはずだ。呼んできてくれ」
イザは急に呼び出され、ヤーナのやつれ果てた様子に驚き心配する。だが、ヘラから話を聞くと急に顔色を曇らせる。彼女はヤーナの肩に手を置いて真摯に見つめる。
「ヤーナ、言いたくないけど確かに私はやったことあるよ。あんたに囲われる前にね。三回も。三回とも死にかけた。二度は薬が濃すぎて、一度は血が止まらなくて。闇医者なんざ、金さえ受け取れればこっちが死にかけてたって構っちゃくれない」
イザはこの船に来る前、遊里の女であり、酷い目に遭ってきた。
「この船にはあんたが必要だし、誰もあんたを責めたりしない。そんなことする奴はタキに半殺しにさせるから。ね、お願いよ」
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