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空が赤く染まる時間。
仕事を終えた大王のいる執務室に僕が入る。
「失礼します」
「あっ」
僕が入ると明るい笑顔で迎える大王。
でも、その笑顔は僕に対しての笑顔ではなく後ろにいるアイツへの笑顔だった。
「太子、待ってたよ!」
「閻魔、私も会いたかった」
外の世界を知らない大王。
世間知らずな大王に近寄ってきたアイツは僕から大王を奪って行った。
僕の方が大王の側に居たのに…
「閻魔、君にプレゼントだ」
そう言って手渡したのは大王の瞳と同じ色の赤い薔薇。
「ありがとう太子」
幸せそうに微笑む大王。
大王はホントに赤い花がお好きなんですね?
では僕も大王の為に…
「大王……」
「なぁに鬼男君?」
「僕からも赤い花をプレゼントさせてください」
僕はそう微笑むとアイツににじり寄った。
「な、なんだ鬼男…」
ジリジリとアイツに近寄る僕に後退りで離れていく。
そして僕はまたにじり寄る。
とうとう窓際になり後がなくなったアイツは困った顔で僕に尋ねる。
「閻魔にプレゼント渡さないのか…?」
「えぇ、渡しますよ…クスッ」
不適な笑みを浮かべた僕はアイツの肩を押した。
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