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卒業を間近に控えた、三月のある一日だった。 朝からひどい雨が降っていることを除けば、いつもと同じようにその一日は始まった。 その日、僕が目を覚ますと、夏子はもう隣にはいなかった。 それは、いつもと何も変わらない光景だった。 僕と夏子はいつも一緒に同じベッドで寝ていたけれど、彼女はいつも僕よりも先に目を覚まし、僕を起こさないように、静かにベッドから抜け出す。 そして、彼女はいつも朝食を準備してくれる。 朝食といっても、たいしたものではない。 パンを焼いてトーストにして(僕が二枚、夏子が一枚だ)、卵を一つだけ目玉焼きにする(もちろんそれは僕のためのものだ)。 あとはインスタントのコーヒーを淹れて完成だ。 毎朝同じメニューだったけれど、どうせ僕はいつも起きたばかりで、味覚もまだ正常に作動していない状態でそれらを食べるのだから、メニューが何であろうと問題はなかった。 ただ、僕のために早く起きて朝食を作ってくれる夏子の気持ちが、何よりも嬉しかった。
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