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僕はリビングを出て、洗面所に向かった。 蛇口を思い切り捻って勢いよく水を出し、その水で顔を洗った。 水はひどく冷たく、そのおかげで、僕の中に仄かに残っていた眠気は完全に吹き飛んでしまった。 僕は洗顔料を使って入念に顔を洗ってから、タオルでサッと拭いた。 それから鏡に自分の顔を映して見てみる。 少し無精髭が生えているけれど、気になる程度のものでもない。 剃ってしまってもよかったのだけれど、面倒臭いので止めておくことにした。 僕は顔を拭いたタオルを洗濯機に放り込んでから、リビングに戻った。 ソファに座ると、夏子が熱いコーヒーを淹れて持ってきてくれた。 「まだ着替えてなかったのね」 パジャマ姿の僕を見て夏子が言った。 「朝食を食べ終えたら着替えるよ」 僕はそう答えてから、トーストにたっぷりとバターを塗ってかぶりついた。 「今日のトーストはいい具合に焼けているでしょう?」 夏子は少し自身有りげな表情をして言った。 「うん、いい感じだよ。僕の一番好きな焼き具合だ」 僕は答えて、二口目をかじった。
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