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僕は夏子と付き合っている間に多くの曲を作り上げた。 どの曲も僕が意識して作ったのではない。 僕の指が勝手に奏でてくれた旋律だ。 僕はそれをテープレコーダーに録音して、楽譜を書いたに過ぎない。 その楽譜もずいぶん溜まっていた。 僕の指が奏でるメロディーは、相変わらず技術的にはそれほど難しいものではない。 初めて作った三曲と大した違いはなかった。 だけど、それでも夏子は僕の作る曲を気に入ってくれていた。 そして、暇さえあれば、僕はよくピアノを弾かされた。 僕は何度か夏子に、自分自身で弾いてみてはどうかと提案してみたことはあったのだけれど、彼女としては、僕の曲は僕が弾かなければ納得のいく形にならないのだという。 彼女にとって、僕の曲は僕が弾かない限り、誰が弾いたとしても(それがたとえ一流のピアニストであっても)、完成した形にはならないのだそうだ。 だから僕はいつも、彼女に乞われるままにピアノを弾いた。
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