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「そういうことではないの。何て言えばいいんだろう、上手く説明できないけれど、きっと私達には恋人という関係は合わないのよ。今はいいかもしれないけれど、きっと先になって私達は離れ離れになるわ。遅かれ早かれ、私達はそういうふうになるのよ。だけど、今だったら、私達は完全に離れ離れにならずにすむと思うの。また、昔みたいな仲の良い友達に戻れると思うの」
夏子は僕の馬鹿な勘繰りを否定するかのように、一気に語った。
仕方がないので、僕は彼女の語ったことについて尋ねることにした。
「どうしてそう思うの?」
「自分自身でもよくわからないの。ごめんなさい」
夏子は申し訳なさそうに言った。
僕には彼女の言葉が上手く理解できなかった。
だけど、きっと夏子自身もどうして僕と別れなければならないのかがはっきり理解できていないのだろうということは、僕にもわかった。
おそらく彼女は、何らかのきっかけでそんなふうに感じるようになったのだろうけれど、それを頭の中で上手く整合性のとれた理論として組み立てることができていないのだ。
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