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僕は腕を組み、彼女の叫びともとれない訴えを黙って聞いていた。 だけど、僕には彼女の言うことが、どうしても理解できなかった。 もしも彼女が僕に対する恋愛感情を失ってしまったというのであれば、友達という関係に戻ろうという彼女の話もわかるような気がする。 もっとも、僕がそれを納得して素直に受け入れることができるかどうかは別の話だ。 だけど、彼女はまだ僕のことを愛していると言う。 そして、僕が彼女のことを愛していることもわかっていると言う。 更には、まさに今しがた、それを再確認したばかりだと言う。 その話の中から、僕は離別に対する合理的な理由を見出だすことができなかった。
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