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だけど、夏子の様子を見ている限り、彼女が固い決意を持って僕に打ち明けたことは感じ取れた。 どうしても別れなければならないというのであれば、それは仕方のないものとして諦めなければならないのかもしれない。 だけど、僕としては、せめてきちんとした理由くらいは欲しかった。 このまま黙って頷いて別れてしまったら、僕は何もない空間をあてもなく彷徨い続ける永遠の迷子になってしまうに違いない。 そうならないためにも、僕たちの別れには、僕が自分を納得させることができるだけの理由が、どうしても必要なのだ。 それが実質的にであれ、形式的にであれ、僕に納得を与えてくれればそれでいい。 それで僕はきっと永遠の迷子にならずにすむことだろう。
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