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「ねえ」
僕は言った。
「何?」
夏子が言った。
「僕にはよくわからないんだ。どうして君が僕と別れたがるのかが。やはり、別れにはそれなりの理由が必要だと僕は思うんだ」
「そうかもしれない。理由は……私だって必要だと思う。私だってできることならば、きちんとした言葉を並べて、その理由を説明したいの。だけど、どうしてもそれができないの」
夏子は両手で顔を覆った。
その奥から、すすり泣くような声が聞こえてくる。
僕は夏子の隣に跪いて、彼女の震える小さな肩をそっと抱いた。
「わかったよ。だったら、今から僕の質問に順番に答えてくれないか? 簡潔で構わない。そうしているうちに、君は何らかの筋の通った理由の説明法を思いつくかもしれない」
「うん」
夏子は小さく頷いた。
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