13

21/29
前へ
/371ページ
次へ
「ねえ」 僕は言った。 「何?」 夏子が言った。 「僕にはよくわからないんだ。どうして君が僕と別れたがるのかが。やはり、別れにはそれなりの理由が必要だと僕は思うんだ」 「そうかもしれない。理由は……私だって必要だと思う。私だってできることならば、きちんとした言葉を並べて、その理由を説明したいの。だけど、どうしてもそれができないの」 夏子は両手で顔を覆った。 その奥から、すすり泣くような声が聞こえてくる。 僕は夏子の隣に跪いて、彼女の震える小さな肩をそっと抱いた。 「わかったよ。だったら、今から僕の質問に順番に答えてくれないか? 簡潔で構わない。そうしているうちに、君は何らかの筋の通った理由の説明法を思いつくかもしれない」 「うん」 夏子は小さく頷いた。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1110人が本棚に入れています
本棚に追加