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「家庭の事情か何かかい? 君の家は金持ちだけれど、僕の家はそうでない。そのために、僕達の交際を君の両親が反対しているとか、そういうことかい?」
僕は尋ねてみた。
すると、夏子は僕の腕の中で、首を小さく左右に振った。
「違うわ。そんなことはないの。私の両親はとてもあなたのことを気に入っているわ。気の早いことに、できることならば私とあなたが結婚することになればいいと思っているの。先週も電話で父がそんなことを言っていたわ」
「よくわからないな」
僕は呟いた。
それから、フッと小さなため息を吐いた。
そんな僕を見て、夏子は申し訳なさそうに僕を見上げて、「ごめんなさい。本当に私がもっとしっかり説明できればいいのだけど」と言い、少し間を空けてから言葉を続けた。
「あのね、こんなふうに言ってもわかってもらえないかもしれないけれど、一応話してみるから聞いてね」
「わかった」
僕はそう言って頷いた。
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