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僕は何も言わずに、夏子の次の言葉を待った。 だけど、彼女はなかなか口を開こうとはしなかった。 どのように話を進めるべきかを考えているのかもしれない。 何かきっかけさえあれば、彼女は流れるように話すことができるのかもしれないと僕は思い、彼女の話に対する疑問を投げかけてみることにした。 「もう一人の君は、何を語りかけてくるんだい?」 僕の質問に、夏子は少しだけ答えるのを躊躇うような仕草を見せたが、覚悟を決めたように頷くと、ようやく口を開いた。 「あなたと別れなさいと言い続けるのよ。そうしないと、きっと取り返しもつかないくらい、私が苦しむことになると言うの。もちろん最初はそんな馬鹿馬鹿しい声に耳を貸すつもりなんてなかった。最初の頃は本当に微かな、囁くような声でしかなかったしね。だけど、日増しにその声は大きく、はっきりと聞こえるようになっていったのよ」
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