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夏子はそんな僕を見て、少し考えてから言った。
「あなたの言う、もっと深い青をした空は、あったに違いないと私は思うわ」
「どうしてそう思うの?」
僕は尋ねた。
すると夏子は即座に、「何となくよ」と答えた。
「何となくか」
僕が呟くと、夏子は少し不満気な表情で言葉を続けた。
「世の中には何となくということが山のようにあるでしょう? むしろ確信をもって、確実にその存在を証すことができるものの方がずっと少ないと私は思うわ」
確かにそうかもしれないと僕は思った。
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