18

7/10
1108人が本棚に入れています
本棚に追加
/371ページ
夏子の言うように、世の中には『何となく』が溢れんばかりに存在するのだ。 『何となく悲しい』、『何となく嬉しい』、『何となくそんな気がする』という感じで、数えていけば数限りないだろう。 きっと僕達がこの世界にあって、確実にその実在を感じることができるのは、おそらく自分自身の存在だけだ。 それすらも、ふとした瞬間にわからなくなることがある。 まるで吸い込まれるように、『何となく』の中に入ってしまう。 そうなった時、僕達は混乱する。 自分が自分でないような気になってしまう。 もしかすると、ふとした瞬間に、再び自分自身を取り戻すことができるのかもしれないが、それがいつなのかはわからない。 もしかしたら、永遠に取り戻されることはないのかもしれない。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!