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ネグロはミケの態度に少し不愉快そうな表情を浮かべて、ゆっくりと話し始めた。 「俺はね、お前が人間を嫌っていることを知っている。おそらく、ここにいる猫の中で、お前が最も人間を嫌っているだろう。もっとも、お前の経験したことを考えれば、それもわからないことではないがな」 「そうかい。それはどうも」 「ここにいる猫達は多かれ少なかれ、人間と共に生活をした経験がある。だけど、お前は生まれたその時から、猫の世界で生きてきた。そして、お前が初めて人間と触れ合ったとき、ひどく恐ろしい経験をした。それは、お前の話を聞いていて、俺もよくわかっている」 ネグロはそこまで言うと、フンと鼻を小さく鳴らして、言葉を続けた。 「俺だって同じようなことを経験していれば、おそらく人間なんて二度と見たくないと思うだろうよ。ここにいる猫達はみんな、それぞれ違った理由で人間不信に陥ってはいるけれど、俺の中ではお前の話が最も印象深く残っている。それは間違いない」 ミケはネグロの言葉のせいで、非常に嫌な過去を思い出していた。 思い出したくもない過去だ。 ミケはその記憶を鍵のついた箱の中に厳重にしまっておいたのだ。 絶対に開くことがないように、しっかりとしまっておいたのだ。 だけど今、ネグロの言葉によってその箱は開かれてしまった。 ミケの頭の中で、一気に記憶が蘇る。
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