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特等席を見つけたその日も、僕は柔道部のしつこい勧誘にあった。 いつもならば、五十メートルほど無視し続けると諦めるのだけれど、その日の勧誘員はいつもの勧誘員よりもずっとしつこく、メインストリートが途切れるところまで僕に付いてきた。 あまりのしつこさに、僕も少し苛立っていた。 怒鳴り付けでもすれば諦めるのかと思ったけれど、それも何となく大人気ないと思ったのでやめておいた。 どうせこのまま無視していればいつものように諦めるに違いないと思い、僕はそのまま黙って歩き続けた。 結局、勧誘員はその後も五十メートルほど僕についてきたけれど、最終的には諦めて去っていった。 僕は少しホッとして、いつもの散策を始めることにした。 前に散策した時には理学部の辺りを散策したから、今度は経済学部と法学部の大学院棟の近くを散策することに決めていた。 僕は目的の場所に向かってゆっくりと歩いていった。 経済学部の大学院棟と法学部の大学院棟は隣り合って立っている。 その二つの建物と向かい合うようにして、経済学部の学部棟と法学部の学部棟が立っている。 僕は経済学部に所属していたので、経済学部の学部棟の方には何度か入ったことがあったけれど、大学院棟の方にはまだ入ったことがなかった。 だけど、僕の目的は建物の中にあるのではなく、建物の外にあるのだから、大学院棟に入る必要はなかった。 僕は大学院に進むつもりはないので、おそらく目の前の大学院棟には入ることも無くこの大学を去ることになるのだろうけれど、それは僕にとって大した問題ではなかった。
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