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だけど、先程からしきりに腹が鳴る。
それもすごい音を立ててだ。
「お腹が空いているの?」
夏子が言った。
僕は黙って頷いた。
「昼食を食べていないの?」
また夏子が言う。
僕はもう一度黙って頷いた。
「だったら、これから何か食べに行きましょうか。私も昼食まだだったからちょうどいいわ」
「そうしてくれるとありがたい。だけど、君の相談というのはいいのかい? 僕達はここに来て昔話とピアノの話と猫の話しかしていない。まだ、君の相談の冒頭の一文すらも僕は聴いていないのだけれど」
「いいのよ、相談なんて食事をしながらでもできるわ」
夏子はそう言って、白い歯を見せて笑った。
屈託のない、少女のような笑顔だ。
それからゆっくりと立ち上がる。
「さあ、行きましょう」
夏子はそう言って、僕に背を向けて歩き出した。
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