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僕達は狭い隙間を通って、大学院棟の正面まで出た。 幸い、辺りに人がいなかったので、僕達が不審な目で見られることはなかった。 僕達はそのまま真っ直ぐに正門の方に向かって歩いた。 夏子の隣を歩いていると、恋人どうしだった頃に戻ったような気がする。 僕達はよくこうして大学のキャンパスの中を並んで歩いていたのだ。 夏子は大学の正門からすぐのところにある駐車場に車を置いているのだと言った。 僕はそれがどこであるのかわからないので、彼女について行くよりほかなかった。 僕達は一言の言葉を交わすこともなくゆっくりと歩いた。 喋らないでおこうと決めたわけでも、喋るなと命令されたわけでもない。 ただ、話すことがなかっただけだ。 いや、あったのかもしれないけれど、それがあまりにも多すぎて、僕は何から話せばいいのかわからなかっただけなのかもしれない。 だけど、どういう理由であったにしろ、僕と夏子は一言の会話を交わすこともなく歩いた。
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