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夏子は懐かしそうに、あちこち見回しながら歩いている。 その姿はまるで、忘れ物でも探しているかのようだった。 前の方から自転車に乗った学生が近づいてきた。 だけど、夏子はそれに気付いていない。 学生の方もよそ見をしていて、夏子に気が付いていない様子だった。 「危ないよ」 僕はそう言って、夏子の腕を引っ張り、自分の方に引き寄せた。 「ありがとう。ぼんやりとしていたから」 「いいんだ。だけどキャンパスの中を歩く時は十分に気をつけた方がいい。無茶な自転車の運転をしている学生が大勢いるからね」 「そうね」 夏子はそう言った。 だけど、彼女はあちこち見回すのをやめなかった。 僕は彼女が自転車にぶつからないよう、十分に注意しながら隣を歩いた。
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