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彼女はエンジンをかけて、慎重に車を発車させた。 ゆっくりと進んで、ゲートの所まで行き、料金を支払うために駐車券と財布を取り出した。 彼女が駐車券を機械に通すと、精算機から女の声が聞こえてきた。 「四百円です」 その声はどこまでも機械的で、無機質だった。 彼女は料金を支払うために財布を開いて、小銭をいじり、僕の方を向いて言った。 「ごめんなさい、小銭がないのよ。お札も一万円札しかないの。悪いけれど、ちょっと貸してくれないかしら」 「構わないよ」 僕はそう言って、ズボンのポケットから財布を取り出した。 小銭を確かめてみると、ちょうど四百円入っていたので、それを彼女に渡した。 夏子はそれを受け取ると「ありがとう」と一言礼を言って、受け取った四枚の百円硬貨を機械の中に入れた。 「ありがとうございました」という機械的な声が聞こえてくるのと同時に、僕達の車の前に立ちふさがっていたゲートが開いた。 それを確認すると、彼女はゆっくりと注意深く駐車場から車を出した。
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