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僕と夏子は車を降りて、ファミリー・レストランに入った。 店内にはほとんど客がいない。 昼食の時間帯でもないし、夕食の時間帯でもない。 考えてみれば、店内にあまり客がいないのは当然のことのように思えた。 僕達が店内に入ると、制服を着たウェイトレスがやって来て、「何名様ですか?」と訊いた。 どう見ても二人にしか見えないだろうと僕は思った。 なぜ、わざわざそれを確認する必要があるのかが僕にはわからない。 だけど、ウェイトレスはおそらく、この店のマニュアルに従ってそうしているだけであって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。 彼女に求められるのはマニュアルの通りに機械同然の動きをすることであって、決して自己の判断において臨機応変に動くことではないのだ。 そこには感情も何も必要ない。 必要なのはマニュアルだけなのだ。 僕は機械のように動くウェイトレスに不自然さを感じながら、「二人です」と答えた。 そうしなければ、物事は何も進まないのだ。 それがある意味において明らかにわかることであっても、僕がそのように言わなければ、事態は前に進まないのだ。
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