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僕の返事を聞くと、ウェイトレスは営業用に作られた無感情な、だけどどこまでも清潔感の漂う笑顔を浮かべて、「おタバコはお吸いになられますか?」と言った。 僕は黙って首を左右に振る。 隣で夏子も同じような仕草をしていた。 ウェイトレスはそれを確認してから、僕たちを窓際の席に案内してくれた。 その席の上には、大きく『禁煙席』と書かれた看板が天井から下げてあった。 当然のことではあるが、テーブルの上に灰皿はない。 僕たちが完全に席に着いた後で、ウェイトレスは僕達の前にメニューを並べた。 それから、もう一度先程と同じ微笑を浮かべて言った。 「お水はセルフサービスになっておりますので、あちらの方でお汲みください」 ウェイトレスはそう言って、冷水器の方を指差した。 冷水器のそばには、透明なプラスティックのコップが山のように積み上げてある。 ウェイトレスは微笑を浮かべたままさらに言った。 「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンでお知らせください」 そして今度は、テーブルの端の方に設置されている呼び出しボタンを指した。
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