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夏子はまだ少し迷いがあるようだったけれど、覚悟を決めた様子で口を開いた。 「私ね、今の夫と離婚しようと思っているのよ」 僕は何となくではあるが、彼女の相談の内容が想像できていたから、それほど驚くことはなかった。 だけど、それと同時に、やれやれと思うのだ。 僕はこの手の相談というのがひどく苦手だし、そもそもそういう内容であるのならば、わざわざ僕がここまでやって来る必要性などどこにもなかったはずなのだ。 「相談というのはそのことなのかい?」 僕は一応確認をとってみる。 彼女は黙って頷いた。 「私、どうしたらいいのか、すごく迷っているの。きっと離婚するなんて言うと夫は怒るに違いないわ。離婚なんてとても認めてくれはしない。だからどうしてもあなたに会って話がしたかったの」 「そうか。だけど申し訳ないが、僕はその手の相談というのがとても苦手なんだ。いいかい、僕は君の夫のことはよく知らない。名前くらいは知っているし、何度か言葉も交わしたこともある。だけどその程度だ。顔だってよく思い出せない。もし僕が君の話を聞けば、一方的に君の肩を持つことになるだろう。よく知らない相手に同情することはなかなかできるものではない。僕は一方的に君の味方となり、君の夫の敵となる。だけど、そういうのは不公平だと思わないかい?」 「そうかもしれないわね」 夏子は呟いた。
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