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「わかったわ。だけど、せめて話を聞いて欲しいの。もちろん上の空で聴いてくれても構わないし、あなたに意見を求めたりもしない。その代わり、最後まできちんと聞いていて欲しいの」 「わかったよ。それくらいならば、僕にもできそうだ」 僕は言った。 だけど、正直に言うと、話を聞くだけでも嫌なのだ。 夏子の話を聞くことによって、僕は結局自分の中で何かを感じざるを得ない。 それを口に出さない限り、彼女を実際に後押しするような形にはならないのかもしれないけれど、結局はそうしているのとほとんど変わりないのだ。 結局、僕は心の中で彼女と夫の関係に干渉してしまうのだ。 だけど、彼女がそれを話すことによって、僕の意見を求めることなく、ある程度の満足が得られるのであれば、僕はそれを我慢しても構わないと思った。 それが僕と彼女の間にある、せめてもの妥協点だ。
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