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僕達はしばらく世間話や昔話をして、車に戻った。
時計を見ると、時刻は四時半を少し回っていた。
一時間と少々、僕たちはファミリー・レストランの中にいたらしい。
エンジンをかけると、再びスピーカーからクラシックが流れ始める。
繊細なピアノの音だ。
少しでも触れれば壊れてしまいそうな、可憐なガラス細工のような繊細さだ。
だけど、先程までとは何となく感じ方が違う。
それはどこか僕を苛立たせるような不快感を覚えさせる。
聴いていて落ち着かないのだ。
絶対的な安心感のようなものは、そこから完全に失われてしまっていた。
おそらく僕の中にある何かが、あまりにも不安定になりすぎて、流れてくる音をそのままに感じることができなくなっているのだろう。
流れてくる音を上手く自分の中で処理することができないでいるのだ。
僕はたぶん、自分で思っているよりもずっと深く深く混乱しているのだろう。
きっと、僕の中のいろんなものがビジー状態に陥ってしまって、僕は上手く作動していないのだ。
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