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だけど夏子は、ハンドル操作を誤ることもなく、無事に峠道を抜け出した。
何事もなかったかのように、夏子の運転は通常の運転に戻った。
僕はホッと安心するのと同時に、どこか残念がる自分を心の中に感じた。
僕達の車はやがて海岸沿いの道に出た。
僕達の目の前には海が広がっている。
島も何も見えない。
どこまでも海が広がっている。
ずっと遠くの方に太陽が見える。
もう、半分ほど海の下にその姿を隠していた。
夕焼けに空も海も赤く染め上げられている。
僕達はそんな空と海と太陽を右手に見ながら、海岸沿いの道を進んだ。
しばらく走ると、右手の小高い丘の上にホテルが建っているのが見えた。
こんな場所に建っているホテルだ、どうせラブホテルに違いないと僕は思った。
そして僕の感じたことは正しかった。
その建物はラブホテルだった。
どこか古ぼけて、あまり利用客のいる様子ではない。
このホテルを建てた人間が何を考えてこんな場所にホテルを建てようと思ったのかはわからなかったけれど、少なくともその考え方は間違っているような気がした。
僕であれば、もう少し客が来てくれるような場所に建てる。
そうでなければ、ホテルを建てる意味などどこにもないのだ。
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