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僕が荷物を整理している間、夏子は夕食の準備をしていた。 夕食のメニューが焼き魚であることは、キッチンから漂ってくる匂いでわかった。 おそらく鯖の塩焼きだろうと思った。 彼女は鯖が好きだったし、僕も鯖が好きだったからだ。 だから、彼女の手料理にはよく鯖の塩焼きが登場するのだ。 荷物の整理が終わって、リビングに戻ると、テーブルの上に夕食の準備が整っていた。 僕の予想通り、そこには鯖の塩焼きがあった。 僕達はいつものようにテーブルを挟んで向かい合って座り、夕食を食べた。 食べ終わると、夏子は僕の隣に移り、そして僕にもたれかかった。 まだ僕はこういうことに慣れていない。 自分でも顔が赤くなっていくのがわかった。 僕がそわそわしているのに気付いたのか、夏子が「ごめん、迷惑?」と言った。 僕は首を振ってそれを否定する。 迷惑であるはずなどなかった。 恋人にぴったりともたれかかられて、迷惑などと感じる理由はどこにもない。 ただ、慣れていないだけなのだ。 だから、どのように対処すればいいのか、それがわからないのだ。
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