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時計を見ると、もう午後十一時を回っていた。
何となく眠気が僕を襲ってきていた。
夏子も少し眠いのか、ときどきあくびをしていた。
「そろそろ寝ようか」
夏子が言った。
僕は黙って頷くものの、自分がどこで寝たらいいのかすらわからない。
何せ僕は初めてこの家で眠るのだ。
確かに僕はこの家に何度も訪れたことはあるのだけれど、この家に泊まるのは初めてなのだ。
いや、泊まるという表現はおかしいかもしれない。
なぜならば、僕はこれからこの家で生活をしていくのだからだ。
「ねえ、僕はどこで寝ればいいんだい?」
僕は訊いた。
夏子は少し考えるような素振りを見せてから、小さな声で答えた。
「私と一緒じゃ嫌? ベッド、一応ダブルサイズだから、二人で寝ることができるのだけど」
僕は夏子の言葉にすぐに返事をすることができなかった。
もちろん、僕自身としては、彼女と一緒に眠ることに何の問題もなかったし、むしろそうしたいという思いの方が強かった。
だけど、僕には今までそんな経験は一度もないのだし、何となく悪いことでもしているような気になってしまう。
もちろん、一緒に寝ることが悪いことであるはずもない。
ただ、何となく僕の中の気恥ずかしさのようなものが、僕にそのように感じさせているようだった。
「本当に、一緒でいいの?」
僕は訊いた。
夏子は黙って頷いた。
それで僕の決心も固まった。
僕はこれから毎日彼女と同じベッドで寝る。
そのうちきっと慣れるに違いない。
僕は彼女と一緒にベッドルームに入った。
夏子は淡いピンク色のパジャマに着替えて、先にベッドに入った。
そして、僕もその横にそっと入る。
そして、僕は彼女を抱いた。
まるで、流れるように、僕達は自然に求め合った。
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