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一口目を吸ったところで、電話のベルが鳴った。
面倒くさいなと思いながら立ち上がり、そして受話器を取った。
電話は夏子からだった。
「久しぶりね。あれから三ヶ月くらいかしら」
「そうだね。ちょうど三ヶ月だ」
僕は答える。
「あの時は、わがままを言ってごめんなさい」
夏子は少し申し訳なさそうに言った。
「気にしなくてもいいよ。僕だって自分の気持ちを一生懸命に押さえつけていただけなんだ。君だけが責任を感じることはない。僕がもっと素直に行動することができれば、君を傷つけずにすんだんだ」
僕は答えた。
タバコの灰がずいぶん長くなって、落ちそうになっていた。
しかし、テーブルの上の灰皿まではずいぶん距離があって、電話のコードも届きそうにない。
僕は仕方なく、そばにあった空き缶の中に灰を落とした。
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