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「ああ、そうしたいと思っているよ。それよりも、君はこれからどうするんだい?」
「そうね、子供と二人、しばらく実家で暮らそうと思っているわ」
夏子はそう言うと、再び黙り込んだ。
僕も黙ったまま、彼女が再び口を開くのを待つ。
僕たちはお互いに受話器を握ったまま、五分ほど黙ったままでいた。
そして重い沈黙の後に、夏子がゆっくりと喋り始めた。
「ねえ、この前あなたと会った後、しばらく考えてみたの。あなたが言っていた、あなたの世界と私の世界について。おそらく、あなたの言っていたことは正しかったのだと、今は思ってる。あなたに抱かれたことを後悔しているとか、そういうことではないの。ただ、私とあなたは、今は確実に別々の世界に生きているのだということがわかったの」
「うん」
僕は相槌を打つ。
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