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「私の進む道と、あなたの進む道はちゃんとそこにあって、私達はあの一時点において、その道を交差させていた。つまり、同じ世界の中にその道をおいていた。だけど、私とあなたの道は離れてしまった。そのままにしておこうと思えばおそらくそうすることもできたのだろうけれど、私がむりやり自分の道とあなたの道を引き離してしまった。私の道の向かう方向とあなたの道の向かう方向は別々になった。最初はほんの少しの隔たりしかなかったのに、時間が経つにつれてその距離はどんどん広がっていった。気がつけば、私達の道はそれぞれ別々の世界に入り込んでいた。それだけの話なのよね」 「そうだね」 僕は言った。
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