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電話を切ったところで、美奈が部屋に入ってきた。 美奈には合鍵を渡してあるから、勝手に入ってくることができる。 彼女は入ってくるなり、持っていた鞄をソファにおいて、その隣に腰を下ろした。 「電話してたの?」 「ああ、久しぶりに友達から電話がかかってきたんだ。大学生の頃の友達だよ」 僕はそう言ってから、美奈と向かい合うように座った。 そして、缶の中からタバコを一本取り出して火を点ける。 僕は煙を深々と吸い込んで、それからゆっくりと天井に向かってそれを吐き出した。 いつも吸っているタバコと何ら変わりはないはずなのに、いつもよりもずっと美味く感じられた。
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