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僕は曲を弾き終えて、レコーダーの停止ボタンを押した。
そこで初めて、美奈が声をあげた。
彼女は録音していることを知っていたので、僕が停止ボタンを押すまでは音を立てないように気をつけていたらしい。
僕が停止ボタンを押したとたんに美奈は声をあげながら、手を叩いた。
「すごい、いい曲だよ」
美奈は満面の微笑を浮かべて言った。
「そうか、それはよかった。君に気に入ってもらえて嬉しいよ」
「いままで明が作った曲を何曲も聴いたことがあるけれど、一番いいと思うよ」
僕はニッコリと微笑んで、テープレコーダーをピアノの上から下ろしてテーブルの上に置いた。
それからソファに腰を下ろしてテープを巻き戻す。
テープの巻き戻しが終わったところで再生ボタンを押した。
小さなスピーカーから、紡がれたばかりの僕の旋律が流れ出す。
僕はそれを一通り通して聴いてみる。
美奈も、ときどき身体を揺らしてリズムをとりながら、黙って曲を聴いていた。
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