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特等席の周りにはいつも猫が群がっていた。
あまり人が来ないからだろうか、猫の憩いの場になっていたようである。
僕が初めて特等席を見つけ、そこに座ったときにも、猫が群がっていた。
特等席の周りに集まる猫は、みんな野良猫らしく、僕になつくということはなかった。
ただ、たった一匹だけ、僕になついていた猫がいた。
黒の多いメスの三毛猫だった。
僕はその猫を「ミケ」と呼んでいた。
僕が特等席を見つけ、そして初めて僕とミケが出会ったその日は、綺麗な春の昼下がりの青空が頭上に広がっていた。
まるで、チューブから搾り出した空色の絵の具を、そのまま真っ白いキャンパスの一面にぶちまけたように、どこまでも透き通った青が続いていた。
綿飴のような白い雲が、風に乗ってゆっくりと流れていた。
そして、太陽の光はときどき雲に遮られていた。
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