02

3/4
1108人が本棚に入れています
本棚に追加
/371ページ
特等席の周りにはいつも猫が群がっていた。 あまり人が来ないからだろうか、猫の憩いの場になっていたようである。 僕が初めて特等席を見つけ、そこに座ったときにも、猫が群がっていた。 特等席の周りに集まる猫は、みんな野良猫らしく、僕になつくということはなかった。 ただ、たった一匹だけ、僕になついていた猫がいた。 黒の多いメスの三毛猫だった。 僕はその猫を「ミケ」と呼んでいた。 僕が特等席を見つけ、そして初めて僕とミケが出会ったその日は、綺麗な春の昼下がりの青空が頭上に広がっていた。 まるで、チューブから搾り出した空色の絵の具を、そのまま真っ白いキャンパスの一面にぶちまけたように、どこまでも透き通った青が続いていた。 綿飴のような白い雲が、風に乗ってゆっくりと流れていた。 そして、太陽の光はときどき雲に遮られていた。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!