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悪い提案ではないと、僕は思った。
正直に言うと、今日は授業を聞いていても、これっぽっちも内容が頭に入ってこない。
教授の声は右の耳から入ってきて、僕の頭の中に留まることなく、左の耳から抜けていっていた。
僕の頭は霞がかかったようにぼんやりとして、まともに機能しているとは言いがたかった。
教室に座っていても、ただ無駄に時間が流れていくだけなのだ。
だから、夏子の提案は僕にとっては決して悪いものではなかったし、むしろ彼女の提案に乗った方が、僕自身もずっと楽であるような気がした。
「わかった、君の言うとおりにしよう。だけど、もしかしたら僕は眠り込んでしまって起きることができないかもしれないから、授業が終わったら電話をかけてくれないか?」
僕は言った。
「わかったわ。電話する」
夏子は満足したように、ニッコリと微笑んで言った。
僕は徹夜で仕上げたレポートを夏子に渡して学校を後にした。
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