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僕は受話器を置くと、干しておいたタオルを取って、台所で顔を洗った。 それから、軽くブラシをかけて寝癖をなおした。 寝ている間に汗をかいたせいか、少し汗臭いような気がした。 せめてシャワーを浴びたかったけれど、そんな時間も無いし、そもそも僕の家の風呂にはシャワーなんて洒落たものは無いのだ。 仕方なく僕は、タオルを濡らして固く絞り、服を脱いで身体中をさっと拭いた。 それで、汗の臭いはそれほど気にはならなくなった。 僕はタンスの中から新しいジーンズとシャツを取り出して、それを着た。 もしかしたら、まだ汗の臭いが少し残っているかもしれないと思い、最後に香水を軽くふっておいた。 僕はそこまでの作業を三分足らずで終えた。 人間、急いでやろうと思えば何でも急いでやれるものなのだなと、僕は自分自身に感心した。 僕は最後に、濡らしたタオルをハンガーにかけてから家を出て、アパートの前に置いてある僕の自転車に跨がって、大学の正門を目指した。
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