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僕は約束どおり、電話を切ってから十分で大学の正門に着いた。
てっきり夏子はもうそこで待っているものだとばかり思っていたけれど、夏子の姿はそこにはなかった。
仕方なく、僕はその場でしばらく夏子を待つことにした。
授業が終わったせいで、正門からは学生がぞろぞろと溢れるように流れ出していた。
僕は下校する学生の邪魔にならないように、正門の脇の方に自転車を寄せた。
夏子を待っている間に、何人かの僕の友人が僕の前を通り過ぎて行った。
彼らはみな片手を軽くあげて、「よう」と一言だけ声をかけて去っていった。
僕も同じようにして、一言だけ、「おつかれ」と声をかけた。
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