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僕が正門にやって来て十分ほどしてから、夏子が駆けてきた。 夏子は僕の前に来るなり、あがってしまった息を何とか抑えながら口を開いた。 「遅くなってごめんなさい。ずいぶん待ったでしょう?」 夏子はそう言って、乱れた呼吸を整えるために一呼吸置いてから、言葉を続けた。 「授業が終わって、進藤君に電話をかけた直後にサークルの先輩に捕まっちゃって、ちょっと話し込んじゃったのよ」 「別に構わないよ。それにたいして待ってはいないからね。時間にしてたったの十分だ。僕の長い人生の中において十分というのはたいした時間ではない」 「そう、それはよかったわ」 夏子はホッと安心したように胸を撫で下ろした。
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