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一曲目を弾き終えたところで、夏子が軽く拍手してくれた。
それから彼女は次の曲を弾くように促した。
僕は彼女に言われるままに、次の曲にとりかかった。
今度も先程と同じように、意識をせずとも指が勝手に動いてくれる。
僕は二曲目も三曲目も、指の動くままに弾いた。
全ての演奏が終わったところで、夏子は大きな拍手を僕にくれた。
僕は何だか照れ臭くてならなかった。
僕は自分の技術が夏子の技術よりもずっと劣っていることを十分に理解していたし、曲自体もそれほど優れたものでないということがわかっていたからだ。
だけど、夏子はどこまでも満足に満ちた顔をして僕の方を見ていた。
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