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「やっぱりね、私の思ったとおりだったわ」
夏子はしばらく拍手をしたあとで言った。
「何がだい?」
僕は尋ねた。
「あなたの作った曲のことよ。この曲はやっぱりあなたが弾くことによって完成されるのよ。おそらく、あなた以外のどんな人がこの曲を弾いても、決して納得のいく形に仕上げることはできないのよ。この曲を完璧にすることができるのは、たぶんこの世界で後にも先にもあなた一人だけなのよ」
夏子は少し興奮気味に言って、言葉を続けた。
「今、あなたが演奏しているのを聞いて、それを実感したわ。あなたの演奏は完璧だったわ。私が演奏はしたときには欠けていた様々なものが、あなたの演奏の中にはあったわ。私、満足したわ」
「そう、それはよかった」
「ええ。その楽譜、あなたに返すわ。だって私が持っていても弾きこなせないのだから宝の持ち腐れよ。だけど、ときどき私の家に来て、あなたの曲を弾いて聞かせてね」
夏子はそう言って微笑んだ。
「もちろん、よろこんで」
僕は答えた。
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