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僕は特等席に腰を下ろした。 学生時代には、僕の隣に大抵ミケが寝ていた。 そんな時、いつでも背後からは他の猫達の警戒に満ちた視線が、ひしひしと感じられた。 だけど、今は隣にミケがいないし、もちろん背後の視線なんて感じることもできない。 何となく、淋しい気がした。 特等席に座っていると、自然と学生時代のことが懐かしく思い出された。 おそらくこの場所は、この大学のキャンパスの中で、もっとも僕の思い出が詰まった場所なのだ。 色々な思い出も、まずこの場所をきっかけに思い出される。 楽しい思い出も、辛い思い出も、学生時代の思い出の全ての出発点は、この特等席にあるのだ。
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