日常の変化

3/3
前へ
/12ページ
次へ
広樹「あ~…やっぱりちょっと調子狂うな~」 自転車を漕ぎながらため息をつく。 音葉「広樹は自分のギターじゃないと本領発揮出来ないもんね」 隣で並んで自転車に乗る音葉がそう言う。 広樹「馴染みってのがあるからな」 …あ、そうだ。 広樹「ごめん、音葉。ちょっと楽器屋に寄って帰るわ。新しい弦やクリーナーとかを買い足そうとしてたから」 音葉「分かった。じゃあね~」 広樹「おー」 俺は調度楽器屋のある道の角を曲がり、音葉と別れる。 ちなみに音葉とは家が隣同士だ。 …。 広樹「弦にクリーナー、あと…そうだ、ピックがもう割れちまったな。買おうか」 ピックを取り、レジに向かう。 広樹「お?」 途中にあったホルダーに巻く形のキーホルダーに目がつく。 使い道を変えれば髪止めにも使えそうな代物だ。 広樹「ん―…買って行くか」 自分のギターと同じ形のを取る。 …ついでに麻耶の分も買って行ってやろうか。 麻耶とは二つ下の俺の妹の事。 実は養子でもある。 今度こそレジに向かい、会計を済ます。 …。 広樹「ふぅ…疲れた…」 家の前に自転車を止める。 広樹「お疲れさん、いつも」 自転車の座る部分をポンポンと撫でる。 いつものことだが、ものにこんな事言ったりしたりしても意味が無い。 だけど俺は愛着ということからこうしている。 こいつも、もう買って六年位するかな。 壊れた所は直していって、買い換えはしなかった。 母さんは買い換えろって言ってるが、こいつが本当に限界が来るまでは買い換える気は無い。 広樹「さて、家に入ろ」 ドアの前まで来る。 広樹「ん?鍵がかかってる…麻耶と母さん、まだ帰って来てないんだな」 鍵を取り出し、ドアを開ける。 広樹「たっだいま~」 誰もいないはずの家にそう言う。 上に上がって行き、自分の部屋の前まで来る。 広樹「お、そうだ。もうあの歌番組やる時間だな。あれでも見ておこうか」 広樹「ま、その前にギターの手入れ手入れ」 ドアを開ける。 …いつも通りに過ぎて行く日常。 このドアを開けた時、俺の日常が一変するのはしるよしも無かった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加