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広樹「あ~…やっぱりちょっと調子狂うな~」
自転車を漕ぎながらため息をつく。
音葉「広樹は自分のギターじゃないと本領発揮出来ないもんね」
隣で並んで自転車に乗る音葉がそう言う。
広樹「馴染みってのがあるからな」
…あ、そうだ。
広樹「ごめん、音葉。ちょっと楽器屋に寄って帰るわ。新しい弦やクリーナーとかを買い足そうとしてたから」
音葉「分かった。じゃあね~」
広樹「おー」
俺は調度楽器屋のある道の角を曲がり、音葉と別れる。
ちなみに音葉とは家が隣同士だ。
…。
広樹「弦にクリーナー、あと…そうだ、ピックがもう割れちまったな。買おうか」
ピックを取り、レジに向かう。
広樹「お?」
途中にあったホルダーに巻く形のキーホルダーに目がつく。
使い道を変えれば髪止めにも使えそうな代物だ。
広樹「ん―…買って行くか」
自分のギターと同じ形のを取る。
…ついでに麻耶の分も買って行ってやろうか。
麻耶とは二つ下の俺の妹の事。
実は養子でもある。
今度こそレジに向かい、会計を済ます。
…。
広樹「ふぅ…疲れた…」
家の前に自転車を止める。
広樹「お疲れさん、いつも」
自転車の座る部分をポンポンと撫でる。
いつものことだが、ものにこんな事言ったりしたりしても意味が無い。
だけど俺は愛着ということからこうしている。
こいつも、もう買って六年位するかな。
壊れた所は直していって、買い換えはしなかった。
母さんは買い換えろって言ってるが、こいつが本当に限界が来るまでは買い換える気は無い。
広樹「さて、家に入ろ」
ドアの前まで来る。
広樹「ん?鍵がかかってる…麻耶と母さん、まだ帰って来てないんだな」
鍵を取り出し、ドアを開ける。
広樹「たっだいま~」
誰もいないはずの家にそう言う。
上に上がって行き、自分の部屋の前まで来る。
広樹「お、そうだ。もうあの歌番組やる時間だな。あれでも見ておこうか」
広樹「ま、その前にギターの手入れ手入れ」
ドアを開ける。
…いつも通りに過ぎて行く日常。
このドアを開けた時、俺の日常が一変するのはしるよしも無かった。
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