序章

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冬の寒さが厳しくなってきたある日、一人の少女がボロボロの服を着ながら歩いていた… 「ハァハァ……ウッ…」ドサッ 少女はついに力尽き、雪の上に倒れ込んだ。 「…私…死んじゃうのかな…パパ…ママ…」 少女の意識が朦朧としてきたとき、一人の少年が少女を見つけた。 少年は雪に足をとられながらも大急ぎで少女のもとへと向かう。 「君!大丈夫!?」 少女は途切れそうな意識をなんとか保ち、少年の顔を見た。 「君は…」 「話さなくてもいいよ。えっと…僕の家に連れていってあげる」 少女はその声を聞くと、ついに意識が途絶えた。 少年は少女の体を起こし、自分が羽織っていたコートをかけ、手袋、マフラーを着せてあげた。 そして、小さな体で少女をおんぶし、自分の家へと歩き始めた。 少年は歩きながら、おんぶしている少女の顔を横目で見る。 (よく見ると可愛い子だなぁ…) こんなときにそんなことを考えてはいけないと思っていたが本当に可愛かった。 少年の初めての一目惚れというやつだ。 「いけない…それより早く帰らないと」 しかし、雪に足をとられてうまく進めない… やっとのことで家の近くまで帰って来た。 少女はその時、一瞬だが意識を取り戻す。 (ここは…) 少女はいつの間にか、コートや手袋、マフラーを着せられて、おんぶされていることに気づく。 (あったかい…) 少女は目に涙を浮かべながら、またゆっくり意識を失っていく… 確かに少年の背中は小さい…しかし、少女にはその背中がとても大きく感じられた。 .
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