日常DOLL

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だから、 洗面所で歯磨きを終えたあと、 ナイフを突き立て言ったんだ。 『ねぇ、死んでよ』 「もう、死んでる」 『じゃあ、消えてよ』 「消えない」 『もう、あなたを見たくないっ』 「そう、じゃあ、それを向ける方向が違ってる」 彼女は、ナイフの切っ先を私に向けた。 「ねぇ? あなたは私。私はあなた。きっと楽になれるわ。けど、できる?」 春の日だまりにまどろむような面持ちで彼女は言った。 私は答えなかった。 答えられなかった……。
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