第10話『放たれる銃弾』

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     パッと見た感じの月城中尉の印象はカニであった。 「これが米軍の最新鋭機か」  月城中尉が操縦する紫電の前方にいるのはオレンジ色のカラーリングをしたアメリカ陸軍所属多脚式機動戦獣、通称『ベフィーモス』。  ベフィーモス本体はLAの1.5倍ほどの大きさをほこる巨体である。その巨体を巨大な4本の足で支えている。しかも、本体の上下部にはこれまた凶悪なレール・ガンが4機塔装備されている。さらに大口径のバルカンが4つ。 「砲台のお化けじゃねぇか……しかも重装甲に重装備、パイロットはウエルッシュ大尉……罰ゲームかよ」  愚痴っても始まらない。すでに演習は始まっているのだ。  平地なため、さかんに訓練用弾を撃ってくるベフィーモスから距離をとりながら戦術を練る。 「性能差があるから、やっぱり近接戦闘か……」  月城中尉は紫電のアサルトライフルで弾幕を張りながら、ベフィーモスの懐に飛び込む機会を伺っていた。  ベフィーモスはベフィーモスで、障害物を巧みに利用するこの紫電を攻めあぐねいていた。ベフィーモスの弱点はとっさの敏捷性がないこと。そのためにコイツは重装甲なのだ。 「ふぅん、あのパイロット……なかなかやるなぁ」  ガムをくちゃくちゃと噛みながら、ふとつぶやく。
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