第10話『放たれる銃弾』

5/12
前へ
/235ページ
次へ
 左手で機体を動かしながら右手で武装を扱う。そのスピードはもはや常人レベルではない。  それでも、バルカンは紫電を捉えることができない。紫電が速すぎるのではない。動く兵器に対する命中精度が悪いのだ。 「ジャパンは嫌いだが……兵器はジャパンのほうがいいな」  自身の正直な感想をポツリと漏らした。  しばらく分の悪い追いかけっこをしていると、視界が急にスモークに満たされた。 「ほぅ……煙幕か……イヤ、チャフスモークってところか」  視界が狭くなり索敵能力が格段に落ちていた。これではレール・ガンによる砲撃もままならない。頼れるのは重装甲のみである。  牽制のためであろう銃弾が装甲を叩いた。 「ジャパンの機械人形がナメた真似しやがって!」  バルカンの残弾数も忘れ、ウエルッシュ大尉は見えない敵にむけ、惜しげもなく銃弾をばらまいた。  第2ハンガー周辺は不思議なくらいに人影がなかった。  普段なら近辺を歩いている整備兵の姿も見当たらない。いや、人はいた。自動小銃を担いで、入り口を護衛するようにして。  その奥にはたくさんの整備兵たちが怒鳴り合いをしながら、指示をだしていた。
/235ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1484人が本棚に入れています
本棚に追加