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彼もまた増援部隊の遅れを気にしているようだ。
「輸送用の大型トレーラーが道路等の都合で遅れているのだから仕方がない。それに我々の戦力だけでもある程度は持ちこたえられるはずだ」
「ですが──」
ばんっと連隊長が机を叩きつけた。反動で写真たてが地面に落下してしまった。
「言われなくてもわかっておる! 我々の部隊は傷ついていることくらい。だが、仕方がないんだ! この方面にいる部隊は我が連隊以外いないのだからな」
吐き捨てるように連隊長は怒鳴った。部隊の状況を一番わかっているのは連隊長自身なのだから。
言葉を失った大尉は所在なさげに視線をあたりにさまよわせる。
「わかったのなら戦闘配置についておけ。いつ戦闘になるかわからんからな」
「……了解しました」
気まずそうに敬礼をすると、大尉は野戦司令部を後にした。そして野戦司令部は連隊長のみとなった。
大尉が出ていった扉を見ながら連隊長は重いため息をついた。
「全く……《機関》の人形は何をしてるんだ? 我々を無駄死にさせるつもりなのか?」
伊那から離れたとある道路──
3台の大型トレーラーが猛スピードで走っている。
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