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※少しグロいです。苦手な方は
#を押して下さい。
止めて。
やめて。
「離し…て!!誰か助けて!!!」
首筋に突き付けられる冷たい金属。
先端は鋭く、光が反射しキラリと光る。
両腕は後ろに拘束され、体温が伝わる位、後ろからぎゅうと刃物を持つ男の腕に体を固定される。
「もう一度聞こう。お前の思う愛情と、俺の思う愛情の違いは何だ?」
「貴方は私を愛しているから殺す。私は貴方を愛しているから共存したい。…違うでしょう?」
拘束されている女は、己を拘束した男を愛している。
愛情の食い違いとは恐ろしいもので。
「共存か。面白い事を言う。俺だってお前を殺し、自分も死に、共存したいと言っている。同じ事だろう?」
「……私は、共に生き…─」
「─生きたくはない。お前はいずれ俺を捨てる。醜いこんな姿の俺など。だからお前が俺を愛しているうちに……」
───────殺す
刃物は一度女の視線と同じ高さまで上がってから、女の胸元へと振り下ろされる。
ドクドクと脈を打ち、それに比例し温かい液体がそこから溢れる。体温は液体と共に流れ、徐々に冷たくなっていく。
歪んだ愛情だ。
自分だけの物に出来た歓喜に男は笑い声をあげた。
愛した女が動かなくなった悲しみに泣き叫びながら。
終
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