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「ちゃんと帰るさ。待っててくれ」
その言葉が一番嫌い。
ちゃんと帰ってきた事なんて無い。
今までの愛しい人達、全て。
行かないで、なんて言っても、無駄な事は充分承知している。
帰るつもりで
勝つつもりで
戦場へ向かっているはずだから。
例え我が国が勝っても、
貴方が帰らなければ
私には意味のないものだ。
「……そんな言葉、聞きたくない」
それは、嘘になる事もあるから。
「どうして?」
「もし帰れなかったら、その言葉は嘘になるから。私は、嘘は嫌い」
「…けど、…帰るって声にしなければ、安心出来ない。本当は怖くて仕方ないんだ。戦場なんて行きたくないんだ。国の為に命を捧げたくはないんだ。……でも、行かなければいけない。だから、自分に言い聞かせてたい。必ず帰るって……」
「……もし帰らなかったら、それは気休めの嘘になる。私に、嘘をついた事になる」
「……君が祈ってくれたら、神様は俺を帰してくれるかもしれないだろ?」
「………………………」
嗚呼、
価値観のズレが、恐い。
考えが違うのが、悲しい。
そう言って出て行った貴方は
数日後
本当に帰ってきた。
でも、もう動かなかった。
冷たかった。
爆弾か何かに遭遇したのか
顔の一部は誰かわからない程
変形している。
血生臭いにおい。
ピクリともしない。
悲しかった。
祈らなければ、よかった。
こんな風に、
もう居なくなった事を
目の前で実感させられるように
遺体で帰ってくるなんて。
神様なんか、信じない。
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