スイーツの憂鬱。

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 スイーツの憂鬱。  パティシエの作るスイーツにはランクがある。 ベーシック、セレクト、ハイクラス、マスター、シークレット、レジェンド。 ランクが上であればある程、取得は難しく高値で取り引きされる。  俺はシガール・オゥ・ショコラ、レジェンドランクだ。 ウチのパティシエは全てのレシピを習得しているのだが、レシピは毎週増える。 新しいレシピが出る度にそいつに掛かり切り。 俺は放置される。 「なぁ、」 「あー、もうちょっと待って」  聞いているのか聞いてないのか、何を話掛けても同じ返ししかしてこない。 「俺ちょー暇なんだけど」 「ああ、もうちょっとだから」  ずっとコレの繰り返し。 毎週毎週…。 いい加減うんざりだ。 そうして増えたレシピのせいで、俺を相手する時間も減るくせに。  呆れて厨房から出た。 どうせ俺なんか見てないんだから、出てったって気付かないんだろ。  何だっていいんだろ、俺なんかじゃなくたって。 【レジェンド】なんて、パティシエに相手にされない俺には無意味なランク付けだ。 「シガオ、出来たぞ、千歳飴」  何でもない顔をして、パティシエは厨房から出てきた。 横には瀬の高い和服姿の男が立っていた。 「そう、良かったね」  それだけ言って店から出て行こうとすると、パティシエは俺の腕を掴む。 「何処行くんだ?」  パティシエは眉間に皺を寄せながら俺に問う。 ただ苛々した。 「アンタのいない所だよ」  パティシエにとって、スイーツのレシピはただのコレクションみたいなモンなんだろう。 それ以上もそれ以下でもない。 だけどスイーツは違う。 「は?」 「じゃぁな」  パティシエの手で生まれたんだ。 刷り込みだと言われたって、パティシエしか見えないのが当然だろ。 「それを俺が許すと思ってるなら、今すぐお前を灰にする」  パティシエは無表情で、俺にそう言った。
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