出会い。

5/26
前へ
/56ページ
次へ
『なぁ』 約束してコンマ数秒でその約束を破りあたしに話しかけてきやがった彼。 「もう話しかけないでって……」 ムッとしてあたしは彼に文句を言う。 『上見てみぃ』 あたしの言葉を割いて彼はスッと屋上を指さした。 「は? な!!」 反射的に彼の指さす方を見るとそこには佇む一人の少年が見えた。 『飛び降りるのかな?』 何故か彼は楽しそうに目をキラキラ輝かせながら物騒な事を言う。 「バカ! 楽しそうに言わないでよ!」 彼の事を鵜呑みにしたワケではないけど……。 もし。 もしもよ。 気付いてて目の前で飛び降りられたら気分悪い。 その一心であたしは屋上まで猛ダッシュする。 陸上部で鍛えた足がこんな時に役に立つなんて……。 『助ける?』 必死なあたしに彼は呑気に尋ねる。 「人として!」 ブルブル汗をかきながらあたしは屋上へ急ぐ。 『ふぅん』 そんなあたしなんかお構いなしの彼。 これだから幽霊ってヤツは……。 ガタン! 屋上へ到着と同時にあたしは勢いよく鉄製の扉を蹴破りそうな勢いで開ける。 「ちょっと貴方! 飛び降りるのはおよしなさい!」 フェンスから少し身を乗り出している少年の元へ駆け寄り声をかける。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加